お彼岸らしい暖かい陽射しを横目に、ぽつりぽつりと仏花をたずさえたお参りの方がやってきます。いささか強い春風は、まるでご先祖様との対面を急き立てるように来る人の背中を押してきます。
喧騒に包まれた日々をはなれ墓前で手を合わせる貴重なひとときは、私たちの心を穏やかにしてくれます。こうした静かに自分と向き合う時間がとても大切であることを改めて感じずにはいられません。
彼岸会に参加する方々は、はじめに本堂の1階で受付をします。こうしたひとつひとつの段取りも、参加する方にとっては儀式に臨むための心の準備になっているのかもしれません。
開式の5分前には50ほど用意された席が満席になりました。皆さん静かに心の準備をされています。
正光寺では、念仏を称えて最期極楽浄土に往生すること、そこに至るまでの人生を一生懸命生きるために内省をすることを大切にしています。念仏と内省を大切にするために、今回から焼香は住職のみが行う旨の案内が開式前になされました。
儀式中は、目を瞑り姿勢を正している方、合掌をしている方、儀式の様子を一心に見つめている方など、それぞれのやり方で静かに内省されています。
読経後、住職から改めて念仏と内省の大切さの話しがあり、最後に皆で十念を称えて静かに儀式は終わりました。
卒塔婆を持ってお墓参りに向かう後ろ姿には、明日からまた始まる日常への決意がみなぎり、その足取りはとても軽やかに見えました。
次の仏事の際にはまた笑顔でお会いできるに違いないことを確信すると共に、その姿からなにやら元気がもらえた気がいたしました。